ワンセグ機能付き携帯電話やスマホでNHKと契約をしなきゃいけないかどうか(裁判事例)

私は元々「ドコモのガラケー→ドコモのスマホ(シャープ製)→ドコモのiPhone→格安SIM」という流れで携帯電話と向き合ってきたので、スマホからiPhoneに機種変更した時点で「え!?iPhoneってワンセグ見れないの!?」と衝撃を受けました。

 

そして更に衝撃を受けたのが、NHKの放送受信料を巡って「スマホは持ってるけどワンセグなんか見ないし、そんなんで金払えって言われて納得できるかボケー!」という常識人とNHKが法廷でバトルをし、支払い義務があるという判決が出てしまったという点です。

 

このページでは「スマホを持ってるだけでNHKと受信契約をしなきゃいけないかどうかの判例」について、分かりやすく解説していきたいと思います。

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放送法第64条

協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であつて、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。第百二十六条第一項において同じ。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。

放送法第64条

こちらはNHKを守っている法律と言っても過言ではない、放送法の第64条の1項です。

常識的にこれを読み解いて要約するなら、恐らく以下のように解釈する人が多いのではないかと思います。

 

  • NHKが受信できるテレビを設置したらNHKと契約をしなくてはならない
  • ただし放送の受信を目的としていなければ問題なし

 

NHKが受信できるテレビを設置したらNHKと契約をしなくてはならない

個人的には「放送の受信を目的としていても、NHKを見ないならそれはそれで認めて欲しい」と思うわけですが、残念ながら現行の法律上は「テレビを見る目的でテレビを設置したらNHKと契約しろ」というルールになっています。

つまり「フジテレビや日テレが見たいんだ!NHKは見ない!」という言い分は、通用しないような法律になっています(まぁ実際に通用している人もいるんですけどね)。

 

ただし放送の受信を目的としていなければ問題なし

問題はここです。「テレビはあるけど、テレビは見てない」って人はメチャクチャ多いんじゃないかと思います。

アンテナ線は繋いでいるけど見ていないって人もいれば、アンテナ線すら持っていないという人もいるかと。

例えば今はネットフリックスとかAmazonプライムとかHuluとかU-NEXTとか…。

 

最近は動画配信サービスが非常に充実しているので「そういう動画配信サービスを見るためにテレビを所有している」という人も少なくないでしょう。

ゲーム専用にテレビを所有しているって人もいるでしょうし、屁理屈でも何でもなく純粋に「放送の受信を目的としていないテレビなら持っている」と声を挙げたい人は少なくないのではないでしょうか?

 

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ワンセグ機能付き携帯電話所有者のNHKとの放送受信契約締結義務

ワンセグ所有者 vs NHK

私はワンセグ機能のあるスマホを所持していますが、これでNHKが契約しろって言ってきたとしても契約しなくていいですよね?

いや、NHKが映るんですよね?ワンセグでNHKが見れるわけですから、払わないって言うのはおかしいです!絶対に放送受信料を払ってもらいます!

 

随分とまぁ頼もしい男性がいるなぁと思って傍観していたのですが、蓋を開けてみたら「NHKから国民を守る党」に所属している議員さんが起こした裁判です。

テレビ報道がほとんど無かったので意外と知られていませんが、実はさいたま地方裁判所にて行われた裁判(平成28年8月26日)の一審でNHKが敗訴しています。

残念ながら二審でひっくり返ってしまいましたが…。

 

ワンセグ機能付きのスマホ所持が受信設備の設置にあたるかどうか

彼はワンセグ機能付きのスマホを持っているので、NHKを見ようと思ったら見れるんですよ!ワンセグの機能が正常である以上、NHKの受信料は払うべきだと思います!

放送法では「受信設備を設置した者」と定義されています。私はスマホを所持・携帯しているのであって、設置はしていません。

 

放送法では「受信機を設置した者」という語句が出てくるので、そこを素直に受け取って「設置してないけど?」という疑問をぶつけただけの話です。

設置と言われると、私なんかは「固定する/備えおく」という意味のように感じますし、取付という言い方に置き換えても成立するような意味として捉えていますが、みなさんはどう思いますか?

消火器は設置、ガスコンロは設置です。じゃあピアスって耳に設置ってこと?ポケットティッシュは設置?(まぁこれは冗談ですが)

 

放送の受信を目的としていない

いやいや、設置とか設置じゃないとか…。それはあんたの屁理屈やん。映るでしょ?見ようと思ったら見れるでしょ?

あなたの家にはワンセグの電波は入るみたいだし、家に居たらそれはもう設置と同じですよ!

では仮に私が所持しているスマホが設置に該当したとしても、私は放送の受信を目的としてこのスマホを所有しているわけではありません。

あくまで通話、メールをする目的で所有しているわけですから、あなたたちが言うところの「放送の受信を目的としない受信設備」に該当するのでは?

ぐぬぬぬぬ。払えと言ったら払え!この屁理屈おばけめ!

 

「そもそも設置もしていないけど、その上で…」というカタチで用意されていた二の矢が「放送の受信を目的としていない」という部分です。

放送法第64条では「テレビを設置したらNHKと契約しなければならない→ただし放送の受信を目的としていない場合はこの限りではない」としています。

 

それを受けて「誰がテレビの受信目的でスマホを所持するかいな」というのが二の矢で用意されていた言い分です。

多くの人は通話とかメール、SNSなどを主たる目的としてスマホを購入すると思います。そこに勝手にワンセグ機能が付いてきただけです。

ワンセグ機能無しで同じ機能のスマホがいくらか安く売られてたら、たぶんそっちの方が売れるでしょう。私がNHK嫌いだという部分を差し引いて考えても、この言い分は筋が通っているように思えるのですが…。

 

一審の判決はNHKが敗訴(2016年8月)

テレビでもほとんど放送されていなかったように記憶していますが、実は第一審の判決では「ワンセグの映るスマホを持っているだけなら受信料を払わなくていい!」という判決が出て、NHKが敗訴しています。

理由は以下の通りです。

放送法2条14号は、「設置」と「携帯」を区別しており、「設置」が「携帯」を含む旨のNHKの主張には、文理解釈上、相当の無理がある。同一の法律において、同一の文言が使用されている場合には、同一の意味に解するのが原則であり、課税要件明確主義の立場からは、いっそう、同一文言の解釈について一貫性が要求される。したがって、放送法64条1項の「設置」は、同法2条14号の「設置」と同様、「携帯」の意味を含まないと解するのが相当である

ワンセグ機能付き携帯電話所有者のNHKとの放送受信契約締結義務

 

物凄く噛み砕いて言うと「あんたらの大好きな放送法の第2条14号では設置と携帯を区別して書いてるわけだから、放送法64条での「設置という言葉の裏には携帯も含まれる」というのは無理のある理屈で、だったら放送法の64条でも携帯という文言を用いて説明すべきじゃないの?」というものです。

 

ちなみに放送法第2条14号はこちら。

「移動受信用地上基幹放送」とは、自動車その他の陸上を移動するものに設置して使用し、又は携帯して使用するための受信設備により受信されることを目的とする基幹放送であつて、衛星基幹放送以外のものをいう。

放送法第2条

この文をまともな人が読んだら、そりゃ「設置と携帯は区別して書かれている」っていう認識になると思いませんか?だって「設置=携帯」になるのであれば、いちいち区別して書く必要がないわけですから。

そしてさいたま地方裁判所で行われた一審の裁判では、当然のようにNHKが敗訴したわけですが…。残念ながらこの話には続きがあります。

他に水戸、大阪、千葉、東京を含む合計5箇所で争われてきた同様の内容の裁判結果は1勝4敗となっており、多くの地方裁判所では「ワンセグ映るんでしょ?じゃあNHKと契約しなきゃ」という結果が出ています。

 

NHKが逆転勝訴(2018年3月)

まぁ多くの人が嫌な予感を感じていたんじゃないかと思うのですが、残念ながら唯一勝っていたさいたま地方裁判所においても二審でNHKが勝訴しました。

この時はここぞとばかりにテレビなどのメディアで取り上げられていて、多くの人が「スマホでもNHK料金を取られるのかよー」と思ったことと思います。

 

そしてNHKの集金人がまさに水を得た魚のようになり「裁判やったらあなた負けますよ?」という強迫スレスレの集金をしているなんて話も聞こえてきたり。

いずれにしてもこの件については2019年3月時点で控訴中です。

 

ワンセグ機能付き携帯電話も受信契約が義務(最高裁にて確定)

2019年3月12日に一連の裁判が終結し、ワンセグ機能付き携帯電話やスマートフォンにおいても放送受信契約の締結は義務であるという判決が下されました。

支払わなければならない金額は、現状では地上料金と同じ月額1300円程度です。

<<NHKの地上契約と衛生契約の違いについて

 

ワンセグでテレビ番組を見る層がどれだけいるのかは知りませんが、個人的には相当厄介な判決が出てしまったなぁと思っています。

今度、NHKの集金人が来たら「テレビ持っていますか→持っていません」の後で「ワンセグ機能付き携帯電話は持っていますか?→持っていません」という、最低でも2ラリーは必要になったということです。

ちなみに嘘の報告をし、それがバレてしまっても罪になるので、心配な方は海外のスマホ(iPhoneなど)に買い替えた方がいいかもしれません。

当然ですが、テレビ分で受信料を支払っている場合にワンセグ機能付き携帯電話も所有しているからという理由で2台分の受信料を取られるということはありません。
一人暮らしの学生さんで実家が受信料を支払っているという場合は、特別な契約になるので確認しておくことをおすすめします。

 

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結論:ワンセグ機能付き携帯電話、スマホもNHKと契約しなければならない

私自身、本当にテレビを見ることがなくなって、所有しているiPhoneも5sという化石に近い端末を使用しているので分からないのですが、国産スマホって全部にワンセグ機能が付いているんでしょうか?

もしそうならNHKの受信料に対して不満な人が、全員他メーカーに流れれば国産メーカーも考えを改めるんじゃないかと思います。

 

よほどのことでもない限り好き好んでワンセグでテレビを見る人なんかいないと思う(せいぜい家に間に合わなかった時のオリンピックやワールドカップとか?)ので、NHK職員に脅されないようにワンセグ機能なしのスマホを持っているのもいいのでは?