令和元年8月15日、政府は閣議において「NHKと契約したら受信料は義務」という答弁書を決定した模様です。
これはN国党党首の立花孝志氏が「議員会館に設置したテレビについて、契約はするが受信料は踏み倒す(80%は支払う)」と宣言していることを受け、立憲民主党の中谷一馬氏が政府の見解をただしたもの。
これまでにも総務省の石田総務大臣が「放送法の趣旨からして契約を結べば支払い義務が生じ、受信料を支払うのは当然だ」と発言する等、三権分立すらも危ぶまれるかのような事態が起きているわけですが…。
果たして本当に「NHKと契約したら受信料は義務」なのでしょうか。再度、今回の事例を踏まえて考察していきたいと思います。
質問主意書の内容について
事の始まりは、8/1に立憲民主党の中谷一馬氏によって提出された質問主意書です。「令和時代のNHKのあり方に関する質問主意書」ということで、NHKに関する質問が11個されました。
質問主意書とは、政府の考えはどのようなものであるかを確認するための質問状と思ってください。
内容は非常に堅苦しい文面で書かれていて、しかも長いので、ここでは私なりに要点だけをまとめてご紹介します。原文は以下のリンクからどうぞ。
- 受信料を踏み倒すと公言している立花氏に対して、政府として何らかの処置をするのか
- 立花氏の発言を受けて、「それが許されるならウチも払わない」と言った自治体があったが、それに対してどう考えているのか。また、政府は何らかの処置をするのか
- これを放置することはゴネ得になり、受信料を支払っている人が損をすることになるが、政府はどのように対応しようと考えているのか
- 緊急放送や公益性の高いコンテンツは受信料を引き下げてノンスクランブル、それ以外のコンテンツは見たい人だけが追加で受信料を支払うというシステムは、政府としてあり得ると考えているのか、それとも絶対にあり得ないのか
- 石田総務大臣は「NHKをスクランブル化してしまうと、公共放送と民放の二元体制を崩しかねない」と発言したが、二元体制が崩れることのメリット・デメリットは何であると考えているのか
- 政府は、NHKのスクランブル化によるメリット・デメリットをどう考えているか
- 産経新聞の世論調査では「NHKのスクランブル化に賛成が88%、NHKの番組を見たくないという人が69%」という数字が出ているが、このような国民の意識を政府はどう考えているか
- テレビの所有率が年々下がってきていて、NHKも時代のニーズに合わせた転換が必要になることは明白だが、受信料の負担について見直す必要があると考えているのか
- イギリスではパソコンも受信料の徴収対象となっており、ドイツ等ではテレビやパソコンの所有に関わらず全世帯から徴収する制度が採用されているが、これらについて政府はどう考察しているのか
- 受信料の徴収の仕方を見直したり、諸外国の公共放送の在り方を参考にしたりすることで、NHKの受信料を引き下げることは可能だと思うが、政府はどう考えているか
- 国民が持つNHKに対する不満によって、NHKから国民を守る党が政党要件を満たすことになったと思うが、この状況を踏まえて今後どうしていくつもりなのか
政府の見解・回答について
2019/08/16現在、衆議院のサイトではまだ情報登録が済んでいない様子です。
なので、各ニュースで報じられている内容についてご紹介します。
- 「放送法でNHKの放送を受信できる受信設備を設置した人は、NHKと受信契約を結ぶ義務があることを定めており、受信契約を結んだ人は、受信料を支払う義務がある」
- 「政府としては受信料の公平負担の徹底に向けて未払い者対策を着実に実施することなどを求めており、こうした指摘を踏まえてNHKにおいて適切に対応すべきものと考えている」
- スクランブル化については「NHKが公共放送としての社会的使命を果たしていくことが困難になる」
- 受信料負担の在り方については「放送をめぐる環境変化や、国民・視聴者から十分な理解が得られるかといった観点も踏まえ、中長期的に検討すべき課題だ」
NHKと契約したら受信料は義務?
今回の答弁書について、各ニュースによると「放送法でNHKの放送を受信できる受信設備を設置した人は、NHKと受信契約を結ぶ義務があることを定めており、受信契約を結んだ人は、受信料を支払う義務がある」という見解を政府が示したようです。
本当に「義務がある」って断言したんでしょうか。現段階では新聞記事やネットニュースがソースになっているので、ちゃんとした答弁書の内容が衆議院のサイトにアップされるの待ちなのですが…。
個人的には「政府としては契約が義務である以上、契約内容に示されている支払いも義務であるという考えだが、受信料の支払いに関しては司法に委ねる」というのが適切じゃないかと思います。
なぜ行政が「支払いは義務である」と決めつけるのか。だったら放送法に「受信料の支払いは義務である」という文言がないのはおかしいです。
実際にこれまでに何度もNHKと国民の間で裁判が行われてきましたが、お金の支払い云々に関しての最終的な判断は、すべて裁判所がしてきました。
「NHKの放送受信料は合憲か?それとも違憲か?」という大きな話題となったものでさえ、政府が「受信料を支払いなさい」と言うことはありませんでしたし、裁判所も「テレビを持っているなら契約は義務だが、NHKは契約してもらえるように努めることが必要」という判決を出しています。
つまり「契約や支払いに納得してくれない住人がいる→裁判で判決をもらいなさい」という意味です。裁判所は「支払いが義務」だとは一言も言っていません。
本来、司法で判断すべき部分について行政や立法が介入してくるなんてことが許されるのであれば、これはNHK問題のみならず「三権分立」すらも守られていない由々しき問題として考えるべきでは?
<<NHK受信料は合憲!?|みなさんに勘違いして欲しくないこと
スクランブル化でNHKが公共放送としての社会的使命を果たしていけなくなる?
石田総務大臣が言うには「スクランブル化してしまうと、NHKが公共放送としての社会的使命を果たしていけなくなる」んだそうです。
「恐れがある」等のニュアンスではなく、ほぼ確実にそうなると断言しているみたいですが、今までやったこともないのになぜ断言できるのか。
私からすれば「残業代を認めてしまうと、会社として成り立たなくなる」というブラック企業と同じに見えますし、だったら淘汰されるべきだという考えですが。
もちろん災害時の緊急放送や教育・教養番組、政見放送などはやればいいと思います。ただし、これらを放送するだけなら、全ての世帯から1000円や2000円も取る必要はないです。
受信料が高騰している原因は、スポーツ中継などの娯楽部分ですから、これらをNHKが放送しなくなったところで公共放送としての使命が果たせなくなるとは微塵も思いませんけど。
政府答弁書に反論する立花氏の動画が分かりやすい
今回の一連の流れを受けて、立花氏が三権分立などの観点から詳しい説明をしてくれているYouTube動画があります。
国会と内閣、裁判所の違いが分からないという人でも、今回の受信料問題について非常に分かりやすく解説してくれているので、興味がある人はぜひご覧になってみてください。
結論:NHKと契約したら受信料は義務かどうかを決めるのは政府じゃない
NHKと契約したら受信料は義務かどうかを決めるのは、政府ではなく裁判所です。
もし裁判所の判断を貰わずに受信料の支払いも義務にしたいのであれば、契約が義務であるという文言に留まっている放送法を改正し、受信料の支払いも義務であることを明確にすればいいだけでは?
どう考えたって「契約は義務、支払いについては明言されていない」なんておかしいです。
だったら「契約も自由にするか、支払いも義務にするか」の、0か100かのガチンコバトルで決めませんか?私たち国民が選べるようにしてください。